CP市場の現在と歴史 | 短期金融市場入門

CP市場の現在と歴史

市場を通じた短期の資金調達

CP(コマーシャルペーパー)の特徴

  • 法的性格は短期社債
  • 満期は4カ月未満のものが9割
  • 海外市場の発達に伴い,日本でもCP市場創設

1.CPは手形?短期社債?

■ 手形CPと短期社債の発行残高
2005年3月末で手形CP発行時の印紙税にかかる特別措置法の期限が切れ,ほぼすべてのCPが短期社債(電子CP)へと乗り換えられた。
出所:日本証券業協会

前ページでCPは短期社債と述べたが,CP市場が創設された当初,CPの法的性格は手形であるとされていた(手形CP)。その後,CPのペーパレス化にともない,法的性格が短期社債へと変更された。もちろん,ペーパレス化が進んだこのご時世において,わざわざ印紙税を支払ってまで紙のCPを発行するというのであれば,それは現在でも法的性格が手形のCPということになる。

当初の法的性格が手形と定められた理由は有価証券取引税が存在していたためである(手形には有価証券取引税がかからない)。その後,有価証券取引税が廃止され,2002年4月に電子CP法[1]が施行されると,同法に基づいて発行されるCPは短期社債と定められることになった。

  1. ^正式名称は「短期社債等の振替に関する法律」。同時に「株券等の保管及び振替に関する法律の一部を改正する法律」も施行された。これにより2003年3月末にはじめて短期社債が発行されることとなった。

2.CP vs 社債:手軽感のあるCP

■ CPの満期期間構成
2018年11月末時点。CPは最長で1年未満。
出所:日本証券業協会

CPは社債の一種で期間が1年未満のものであるが,実際の期間は4カ月未満のものが約9割を占める。長期の社債(一般に「社債」と呼ばれるもの)によって調達される資金は工場建設などの大規模なプロジェクトに使われる場合が多い。しかし,CPによって調達される資金は通常の運転資金に使われる。これは長期金融市場と短期金融市場の特色そのものといえるだろう。

こうした用途の違いを反映して,CPは通常の社債よりも機動的に発行できるようになっている[1]。CPも社債も発行するには財務局に届け出を行う必要がある点は同じだ。しかし,通常の社債が発行の都度届け出を行わなくてはならないのに対し,CPは発行枠を一度届け出れば,その範囲で自由に発行することができる。たとえば100憶円との発行枠を届け出た場合,その額に到達するまでは10億円,20億円と機動的にCPを発行することができる[2]

  1. ^CPでは通常の債券を発行する場合に必要な社債原簿の作成や社債権者集会に関する規定の適用は免除されている。(振替法83条2~3号)
  2. ^払込金額のほかCPの利率も上限を設定したうえで,取締役会において自由に決定することができる。

3.CP市場の歴史

■ 三菱商事
三菱商事など10社からなる日本CP協議会はCPペーパレス化に向けて自主ルールの策定などを行った。

アメリカのCP市場は戦前から存在していた[1]が,日本でCP市場が創設されたのは1987年である(ヨーロッパも1980年代からCP市場が創設された)。1980年代後半といえば日本経済がバブル景気(日本資産バブル)に突入する頃である。日本企業の海外進出も活発化し,海外にある日本企業の子会社は現地でCPによる資金調達を行うようになっていた。しかし,日本にある親会社はCPの発行ができない。これは実に不便だという話になり,産業界から国内のCP市場創設を望む声が高まった。

現在,CP市場は日米ともに短期金融市場として重要な位置を占めている。2008年にリーマンショックが起こった際にはFRBも日本銀行もCP買入を行った[2]。CP買入は市場に資金を供給するほか,企業の信用リスク(倒産や債務不履行となるリスク)を低下させて信用収縮を防ぐなどの効果があるとされている。

  1. ^1970年6月にはCP市場危機が発生している。ペン・セントラル鉄道の破綻に際し,CP専門の格付け会社であるNCO(ナショナルクレジットオフィス)が同社に最上位の格付を付与していたため,格付に対する疑念が生じ,CP市場がパニックに陥った。
  2. ^アメリカでは2007年の夏ごろから既にCP市場での信用収縮が続いていた。リーマンショックの予兆がCP市場に現れていたとされている。
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