金融政策について | 短期金融市場入門

金融政策について

短期金融市場と不可分の金融政策

金融政策とは…

  • 中央銀行(日本では日本銀行)が行う政策
  • 金利や資金供給量を動かす
  • 景気や物価の安定を目指す
  • 通常,不景気のときは金利を引き下げる

1.金融政策は絶大な影響を与える

いくつかのページで短期金融市場は金融政策と密接にかかわると説明しているが,そもそも金融政策自体がよくわからないという人のため,このページで簡単に説明しておく。金融政策マクロ経済政策のひとつで,中央銀行が金利や資金供給量を動かして,景気や物価の安定を目指すものである。マクロ経済政策には財政政策金融政策がある

政策担当手段
財政政策政府減税,公共事業など
金融政策中央銀行金利操作など
■ 日本銀行

金融政策の説明についてやや濁した書き方をしたのは,政策の目標が国によって若干異なるからだ。たとえば,日本(日本銀行)では「物価の安定」と定義されているが,アメリカ(FRB[1])では「物価の安定」および「雇用の最大化」と2つの目標が定められている。

日本の金融政策について重要な点をざっくりまとめると以下のようになる。

  • 通常の金融政策はコール金利を上げ下げする
  • その主な手段は公開市場操作
  • 現在はコール金利の上げ下げではない特殊な金融政策がとられている
  1. ^FRBは連邦準備制度理事会(Federal Reserve Board)の略称。米国の金融政策は,各地区にある連邦準備銀行(地区連銀)の総裁(うち5名)とFRBの理事7名とで構成されるM連邦公開市場委員会(FOMC,Federal Open Market Committee)によって決定される。

2.金利を動かすとどうなるのか

■ 高金利時の企業プロジェクト
■ 低金利時の企業プロジェクト
通常,不景気の時は金利を引き下げ,企業の設備投資などを促進する。

金利の引き下げは設備投資などの増加を促すとされている。たとえば,1,000万円投資して,翌年には1,100万円になるプロジェクトがあったとする(収益率10%)。このとき銀行預金の金利が12%だとしたら,プロジェクトは実行されないだろう。銀行に1,000万円預けておけば翌年には1,120万円になっているからだ。もっと言えば,多くの企業はお金を借りてきてプロジェクトを行っているのだから,金利12%で借りてきて収益率10%のプロジェクトを行えば赤字になってしまう。そこで不況の時などには金利を引き下げることで企業がお金を借りやすい,プロジェクトを実行しやすい環境を作り出す。景気が良くなれば企業の倒産リスクは低下するため,企業はさらに銀行から借入を行えるようになる。

こう聞くとでは金利は低ければ低いほどよいのではないかと思うかもしれないが,やりすぎると物価の高騰バブルなどを発生させる場合がある。収益率の低いどうでもいいプロジェクトが次々と実行され,金融機関や投資家のリスク選好度は高まっていく。消費も過熱して,インフレ率は上昇する。こうした状況を抑える場合,中央銀行は金利を引き上げてインフレを抑制することになる。[1]

  • 金利引き上げ :インフレ時(消費や投資の過熱)
  • 金利引き下げ :不況時(消費や投資の縮小)
■ 政策金利変更時のオーストラリアドル
2015年2月3日の政策金利変更時(現地時間)。

このほかの金融政策の重要な経路として為替レートがある。投資資金は金利が高いところに集中しやすい[2]。そのため,自国の金利が引き下げられれば,相対的に金利の高い海外へと資金がシフトし,為替レートは自国通貨安になる(日本の場合,円安)。自国通貨安になれば輸出に有利に働くため,景気浮揚につながることになる。

しかし,自国通貨安による景気拡大は海外景気を犠牲にすることと表裏一体である。各国がこうした政策を行おうとすれば通貨の切り下げ競争を招く可能性があるため,通貨安誘導が金融政策の主目的にされることは基本的にない。

  1. ^そのほかの意見としては「景気がいいうちに金利を上げておかなければ,いざ景気が悪化したときに金利を引き下げる幅がなくなってしまう」というものがある。こうした考え方は国際決済銀行(BIS,Bank for International Settlements)がよく主張していたため,「BISビュー」と呼ばれることがある。
  2. ^金利水準やその国の資金量の格差だけが為替レートを決定するわけではない。しかし短期的な傾向として,金融政策が変更された場合などには為替レートが大きく変動する。