1.担保としての国債
金融機関が取引を行うにあたって,国債はそれこそ現金のように活用される。短期の資金過不足を調整する際の担保として用いられるほか,ヘッジ会計やデリバティブ取引の担保としても用いられる。現金のように活用されるのなら現金そのものを取引に使えばよいではないか
と思うかもしれないが,現金はそのまま置いておくと利子がつかない。そこで金融機関は『安全資産』として現金ではなく国債の状態で保有するのが一般的である。
実際,お金を貸す側にとって最も望ましい担保は国債だ。株だと価格が毎日大きく変動するため,担保としては扱いづらい(お金を貸した翌日に株価が急落すれば,担保価値は毀損する)。一方,国債は最悪満期まで持っていれば国が換金してくれるため,(国がつぶれない限りは)お金は戻ってくる[1]。また,国債には高い流動性がある。たとえば,担保にゴッホの絵をとったとしても,思った通りの値段で買い取ってくれる人がすぐに現れるとは限らない。他方,国債は日本政府が大量に発行されており,市場で頻繁に取引されているため,すぐに売却して換金できる。こうした事情を背景に,日本で行われているレポ取引の9割は国債レポ取引となっている。
- コール取引の種類(担保,期間)
- 公開市場操作とは(コール市場のページ)
- ^昨今の低金利環境下では国債利回りがマイナスとなっている。マイナスの利回りのものを買えば,当然投資した資金が完全に回収できるわけではない。しかし,マイナス金利政策がとられているなかで現金(日銀当座預金)で持っていてもマイナスの金利が適用されてしまうため,国債の利回りがマイナスであっても依然として高い需要がある。