FB市場・TB市場 | 短期金融市場入門

FB市場・TB市場

TDBに統合される以前の短期国債市場

FB・TBとは…

  • FBは政府の資金繰りに用いられる
  • 為替介入にもFBが使われる
  • TBは国債の借り換えに用いられる

1.FB(政府短期証券)とは

■ TBの発行額
1999年4月以降,公募入札方式導入。
出所:財務省

FB政府短期証券)は政府の一時的な資金不足を補うための国債である。その歴史は古く,1886年,明治時代にまでさかのぼる。もっとも,発行されたFBは基本的に日銀がすべて買い取っていた[1]ため,市場に流通し始めたのは1999年に入ってからだ。

FBは以下に示すよう,その目的によって様々な発行根拠の規定が存在する。

  • 財務省証券
  • 食糧証券
  • 財政融資資金証券
  • 外国為替資金証券
  • 石油証券
  • 原子力損害賠償支援証券

上記以外にも,発行はされていないが法律上整備されているものとして印刷事業証券国有林野事業専売貿易保険事業証券郵政事業保証アルコール専売事業証券が存在する。このうち,財務省証券外国為替資金証券だけ簡単に紹介する。

財務省証券

財務省証券はほかの短期金融市場の取引と同様,政府の一時的な資金繰りのために用いられる。たとえば財政政策を行うのに資金が必要だが,税収が国庫に納付されるのは数カ月先といった場合,つなぎの資金はFBによって調達されることになる。

外国為替資金証券

■ 外国為替資金証券の残高
出所:財務省

そのほかFBは特別会計の一時的な資金不足を補う場合にも使われる。2000年代に有名になったのは外国為替資金証券による為替介入だ。

2003年,日本円が世界の投資ファンドから狙われたとき,日本政府は大規模な為替介入を行い,これを撃退した(テイラー・溝口介入,通称「日銀砲」)。当時大幅な円高を見込んだ投資ファンドが日本円を買いあさり,円高がさらに加速する事態となった[2]。日本政府はこれに対抗するため為替介入を実施。具体的には政府がFBを発行して資金を調達し,ドルを買う(=代わりに日本円が売る)ことで,円高にブレーキをかけたのである。このようにFBは政府が機動的に政策を行う場合にも用いられる。

  1. ^1956年まで日銀引受方式。その後,1999年3月まで定率公募残額日銀引受方式。
  2. ^イラク戦争(2003年3月20日)に向けて不確実性が高まり,ドルが売られ,円が買われる展開が続いた。その後は日本政府の為替介入などによって落ち着いていたが,9月20日のドバイG7で日本の為替介入を牽制するような内容の声明文が出されると,再び急激な円高が進行した。

2.TB(割引短期国庫債券)とは

TBは償還される国債の借り換えを行うための国債であるが,その目的を知るためには60年償還ルールを理解する必要がある。60年償還ルールとは国債を60年かけて返済するというルールである。世の中には5年国債や10年国債があるじゃないか,それに60年国債なんて聞いたことがないぞと思われるかもしれないが,実は5年国債であろうと10年国債であろうと,借り換えを繰り返すことによって60年で償還する決まりになっているのだ。

■ 60年償還ルールのイメージ
600のうち100を10年後に償還,500は借り換え。

たとえば10年国債で600億円の資金を調達したとする。10年にわたって利子を払い続け,満期が到来したら元本の600億円を返済する。一見10年後に600億円返済しているようだが,実はまだ続きがある。このうち500億円分は再び国債を発行して調達する決まりになっているのだ。したがって,実質的に返済されるのは100億円分であり,残りはさらに国債を発行して返済を先延ばしにする。そうやって1年あたり1億円ずつ返済し,60年かけて全額返済するのだ。このようなスタイルをとっている理由はいくつかある。

  • 単純に一括で返済するだけの資金(税収)がないから
  • そもそもインフラ建設や災害援助は日本国民全体で負担すべきであり,その時代の人たち(10年債なら10年間)だけで資金をまかなうべきものではないから
  • 突然一括で多額の資金返済を行うと金融市場を混乱させ,経済に悪影響を与えるから(それまで国債だったものが突然現金に変わればインフレを招いてしまう)

こうした理由から,政府としてはスムーズに借り換えを繰り返し,国債の償還を平準化していく必要がある。この議論が高まったのはオイルショック以降[1]だ。国債が大量に発行されるようになったことで,その後やってくる大量償還をどうさばいていくかということが重要な問題となった。最初のTB発行が1986年と比較的新しいのはこのためである。

  1. ^1975年度補正予算から歳入補填国債(赤字国債)が大量発行されるようになった。
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