短期金融市場の分類 | 短期金融市場入門

短期金融市場の分類

インターバンク市場とオープン市場

短期金融市場の分類

  • 金融市場は発行市場と流通市場に分けられる
  • 取引形態は取引所取引と相対取引(店頭取引)に分けられる
  • インターバンク市場は金融機関のみが参加できる
  • オープン市場は金融機関以外も参加できる

1.金融市場の分類

トップページにあったとおり,短期金融市場を含む金融市場は以下のように分けられる。

■ 金融市場の分類
■ 東京証券取引所

ここで金融市場全体の分類について簡単に触れておく。実は金融論などにおける『金融市場』という言葉は世間でイメージされているよりも広い意味を持つ。特に発行市場や相対取引の市場をも含めて『金融市場』と呼ぶことにはややギャップを感じるかもしれない。

そんなこと知っとるわいという人は短期金融市場の分類である「4.インターバンク市場とオープン市場」のところまで読み飛ばしてもらってかまわない。

発行市場と流通市場

  • 発行市場:資金調達のため新規発行される証券などを取引する市場
  • 流通市場:既に発行された証券などが投資家に転売される市場

取引所取引と相対取引

  • 取引所取引:東京証券取引所などに注文を集中して決済する取引
  • 相対取引:売買の当事者同士1対1で行う取引(店頭取引

インターバンク市場とオープン市場

  • インターバンク市場:金融機関のみが参加できる市場
  • オープン市場:金融機関以外も参加できる市場

2.発行市場と流通市場

多くの金融市場(特に証券市場)には発行市場流通市場が存在する[1]

  • 発行市場(プライマリーマーケット):企業などが新たに証券を発行する市場
  • 流通市場(セカンダリーマーケット):既に発行された証券を取引する市場
■ 発行市場と流通市場
これらの取引は通常証券会社が仲介する。

一般にイメージされる市場は流通市場だろう。金融機関や個人投資家が証券を売買する市場だ。株価が上昇・下落した夕方にロンドン市場がオープンするといったことが話題になる。一方,発行市場は企業が証券を発行して資金を調達する市場を指す。したがって,流通市場は発行市場で取得された証券が転売され,流通する市場ということができる。発行市場ではA社が新規上場B社が公募増資を発表といったことが話題になる。

両市場における金融機関の役割はかなり異なっている。たとえば学生が金融機関に就職しようとすると,ところで君はプライマリー志望なの?セカンダリー志望なの?と聞かれる場合がある。前者は発行市場のことであり,企業の上場や買収を行う投資銀行業務などを指している。一方,後者は流通市場のことであり,株や為替を機動的に売買する資産運用業務などを指している。

  1. ^現先取引やレポ取引などは,その性質上流通市場しか存在しない。

3.取引所取引と相対取引

金融取引には取引所取引相対取引がある。

  • 取引所取引:証券取引所に売買注文を集中させる取引(株式市場など)
  • 相対取引(店頭取引):証券会社などが相手方となって,1対1で行う取引
■ 取引所取引
■ 相対取引
相対取引は通常,どちらかの投資家が銀行や証券会社であるため,店頭取引とも呼ばれる。

一般にイメージされるのは取引所取引だろう。東京証券取引所などに売買注文が集められ,それを突き合わせていく。それに合わせて株価などが目まぐるしく変わっていく。しかし,短期金融市場のコール取引などは一対一の相対取引で行われる。証券取引所などで集中的に決済されているわけではない。たとえば,相対取引の代表例である国債の売買は証券会社が価格を提示し,それでよければ売買成立となる。この価格は証券会社が勝手につけたものだ。そのため,他の証券会社に行けばもっと安く売ってくれたり,もっと高く買い取ってくれたりしてもらえることもある,その点は普通の買い物に近い。

金融論などでは相対取引にも市場という概念が用いられる。もっとも,金融取引ではなくてもアニメ市場は拡大を続け,その規模は2兆円に達しているなどと言われる場合があるだろう。当然,ここでいう「アニメ市場」とはアニメ関連商品取引所のようなところで売買注文が飛び交っているわけではない。相対取引のコール市場もこれと同じだ。コール市場残高とはそれぞれのコール取引残高の合計であり,日銀が公表しているコール金利それぞれのコール取引における金利の平均値である。以下,両取引の簡単に特徴をまとめておく。

取引所取引

  • 不特定多数の投資家が参加しているため,流動性が高く取引価格も公正な場合が多い
  • 取引対象が標準化されているものに限られる

相対取引

  • 交渉で価格が決まるため,やや不透明感がある
  • オーダーメイドの取引が可能
  • 標準化されていないもの,品薄のものなどが取引できる

4.インターバンク市場とオープン市場

短期金融市場は市場参加者という面でインターバンク市場オープン市場に分けられる。

インターバンク市場

■ 大手銀行が集う金融街

金融機関のみが参加できる市場。『インターバンク(銀行間)』とはなっているが,銀行のほか証券会社や保険会社なども参加している[1]。短期金融市場におけるインターバンク市場はコール市場手形市場に分けられるが[2],2000年以降,手形売買取引はほとんど行われていない[3]。したがって,

  • インターバンク市場 ≒ コール市場

と考えてもらって問題ない。

オープン市場

金融機関以外も参加できる市場。具体的には金融機関ではない事業会社が取引に参加している(CD市場など理屈上は個人でも参加できるものもあるが,基本的に法人しか参加していない)。1970年代から始まった金融自由化以降,オープン市場の残高は急激に拡大していった。

  1. ^英語の「Bank」は日本の「銀行」よりもやや広い意味で用いられる。
  2. ^外貨やデリバティブの市場を除く。
  3. ^日銀がオペに使う場合などは除いている。金融機関が相手となる手形取引の残高についてはゼロに近い。