1.金融調節:日銀の日々の仕事
金融調節とは中央銀行が行う資金量の調整である。日銀は短期金融市場全体の資金過不足を日々調整することで,安定的な金融取引を支えたり,コール金利を政策目標水準に誘導したりしている。
金融機関は日銀に当座預金口座を持っており,そこで振込などの金融機関同士での資金移動を処理している。それらの安定的な取引を保証するため,日銀当座預金には必ず一定量の資金を預金準備として残しておかなくてはならないと定められている(準備預金制度)。もし期間内の所要準備を維持できなければ日銀からペナルティを食らう仕組みとなっている。そこで資金不足の銀行はほかの銀行から借りてくることになる(コール取引)。
振込による資金の過不足などはコール取引によって手当てすることができる。A銀行からB銀行に1億円振り込んでも,A銀行がマイナスになった分の金額がB銀行のプラスになるだけであって,金融機関全体で保有している資金量が変わるわけではない。余分に持っているB銀行が不足しているA銀行にコール市場で貸し出せば問題ない。しかし,取引によってはそうではない場合が存在する。ひとつは銀行券要因,もうひとつは財政等要因である。
銀行券要因とは銀行券(現金)の受入・引出で生じる変動である。ある人がA銀行から1億円のお金を引き出して,それを自宅で保管したとする。その場合,日銀当座預金は全体で1億円分減少する(かわりに家計の保有する現金が1億円分増加する)。
また,財政等要因は政府が資金を動かす場合に生じる変動である。政府は金融機関と同様,日銀に当座預金口座を持っている。たとえば法人税の支払いは各金融機関の日銀当座預金を通じて政府の口座へと振り込まれる。このとき政府は振り込まれた資金をコール市場でほかの金融機関に貸し出すわけではないため,市場は資金不足に陥ることになる。
以上のような形で金融機関全体が保有する資金の量が減少すると,コール市場は資金不足で金利が上昇する。これに対し,日本銀行は資金量を増やすことでコール金利の急騰を抑えることになる。こうした日本銀行による資金量の調節は金融調節と呼ばれている。