国庫短期証券(TDB)市場 | 短期金融市場入門

国庫短期証券(TDB)市場

オープン市場の指標となる市場

国庫短期証券とは…

  • 短期の国債
  • TBとFBが統合して誕生
  • オープン市場の指標的存在

1.FBとTBが統合し,TDBに

■ 財務省
TDBは財務省が発行。

国庫短期証券とは期間1年未満で発行される国債[1]短期国債)のことである。当初から満期1年未満の割引形式で発行されるもののことを指しており,たとえば発行されてから4年経過している5年国債(残りの期間は1年)などは国庫短期証券とは呼ばない。

国庫短期証券は短期国債(短国),TDB(Treasury Discount Bill),T-Billなどとも呼ばれるが,かつては

  • 政府短期証券FB,Finance Bill)
  • 割引短期国庫債券TB,Treasury Bill)

と呼ばれ,別々に扱われていた。これらは発行の目的が異なるだけで,証券の商品性は同じである。2009年2月以降,これらは国庫短期証券として統合発行されることとなった。なお,FBTBの違いを簡単に説明しておくと,

  • FB:政府が一時的な資金不足を補うための国債
  • TB:既に発行している国債の借り換えを行うための国債

となっており,発行根拠となる法律はそれぞれ異なっている[2]

  1. ^現在発行されている国庫短期証券の満期には3ヵ月,6カ月,12ヵ月がある。
  2. ^TBは特別会計法46条1項。FBは財政法7条1項(財務省証券),特別会計法83条1項(外為資金特別会計)など目的によって複数の法律にまたがっている。

2.オープン市場における最重要金利

■ 信用スプレッドのイメージ
返済可能性の低い貸出先ほど信用スプレッドは大きくなる。

国庫短期証券の金利はオープン市場における最も重要な指標といっていい[1]。理由はCPやCDには発行企業の信用スプレッドが乗っているためだ。たとえば銀行が企業にお金を貸すとき,信用のない企業ほど高い金利で貸すことになる。金利を高くつけなければ,貸出のリスクに見合わないからだ。企業が破綻するリスク・返済が滞るリスク信用リスクと呼ばれるが,これはCPの発行にも当てはまる。CPを発行しているのが民間企業である以上,返済不能となるリスク分(信用スプレッド)が金利に上乗せされることになる。CDも同様,銀行の信用リスク分が金利に上乗せされている(特にCDは預金保険の対象となっていないため,銀行が破綻すればお金は戻ってこない可能性が高い)。その点,国庫短期証券を発行しているのは国であり,最も信用スプレッドが低いとされている[2]

■ 市場売買高の比較
2017年の売買高。

加えて国庫短期証券は非常に高い流動性を持つ。国庫短期証券は日々多額の取引が行われており,市場ですぐ売買することができる。国庫短期証券が市場にあふれているのは,単に今の政府が国債を大量に刷りまくったからでしょうという指摘が入りそうだが,もちろんそれも理由のひとつだ。しかし仮に政府が国債を大量に発行していなかったとしても,国庫短期証券の流動性が圧倒的に高いことは変わらないだろう。なぜなら,CPやCDの残高が大きかったとしても,それらは結局発行企業の合計額だからだ。たとえば,CPを発行している企業は500社以上存在しており,それぞれ金利水準が異なっている。一方,国庫短期証券を発行しているのは日本政府だけだ。そうした面からみても国庫短期証券の金利はオープン市場において高い指標性を持つといえる。

  1. ^なお,公募入札によって国庫短期証券市場(TB市場・FB市場)が形成される前はCD3ヵ月物金利がオープン市場における指標的な金利だった。
  2. ^日本政府の信用は低いという人もいるかもしれないが,仮に日本政府が返済不能となれば,日本の通貨である円も無事ではいられない。通貨の信用がなくなれば,円で資金を調達しているCPやCDも紙クズ同然になる。