1.FB(政府短期証券)とは
出所:財務省
FB(政府短期証券)は政府の一時的な資金不足を補うための国債である。その歴史は古く,1886年,明治時代にまでさかのぼる。もっとも,発行されたFBは基本的に日銀がすべて買い取っていた[1]ため,市場に流通し始めたのは1999年に入ってからだ。
FBは以下に示すよう,その目的によって様々な発行根拠の規定が存在する。
- 財務省証券
- 食糧証券
- 財政融資資金証券
- 外国為替資金証券
- 石油証券
- 原子力損害賠償支援証券
上記以外にも,発行はされていないが法律上整備されているものとして印刷事業証券,国有林野事業専売,貿易保険事業証券,郵政事業保証,アルコール専売事業証券が存在する。このうち,財務省証券と外国為替資金証券だけ簡単に紹介する。
財務省証券
財務省証券はほかの短期金融市場の取引と同様,政府の一時的な資金繰りのために用いられる。たとえば財政政策を行うのに資金が必要だが,税収が国庫に納付されるのは数カ月先
といった場合,つなぎの資金はFBによって調達されることになる。
外国為替資金証券
そのほかFBは特別会計の一時的な資金不足を補う場合にも使われる。2000年代に有名になったのは外国為替資金証券による為替介入だ。
2003年,日本円が世界の投資ファンドから狙われたとき,日本政府は大規模な為替介入を行い,これを撃退した(テイラー・溝口介入,通称「日銀砲」)。当時大幅な円高を見込んだ投資ファンドが日本円を買いあさり,円高がさらに加速する事態となった[2]。日本政府はこれに対抗するため為替介入を実施。具体的には政府がFBを発行して資金を調達し,ドルを買う(=代わりに日本円が売る)ことで,円高にブレーキをかけたのである。このようにFBは政府が機動的に政策を行う場合にも用いられる。
- ^1956年まで日銀引受方式。その後,1999年3月まで定率公募残額日銀引受方式。
- ^イラク戦争(2003年3月20日)に向けて不確実性が高まり,ドルが売られ,円が買われる展開が続いた。その後は日本政府の為替介入などによって落ち着いていたが,9月20日のドバイG7で日本の為替介入を牽制するような内容の声明文が出されると,再び急激な円高が進行した。